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スウェーデンが重視した経費支出を見ると、人間の能力を高める教育投資を重視していることがわかる。
日本では不況から脱出するために、企業から人間を追放しようとしている。
しかも、日本では可能な限り、職務を単純化し、パート労働などの非正規従業員に職務を委ね、労務コストを抑制しようとしている。
さらに、企業の租税負担や社会保障負担を低めて、国際競争力を強化しようとしている。
つまり、日本では可能な限り、コストを低めて国際競争力を強めようとしている。
これを一憂から表現すれば、企業の利潤のシェアを引き上げることによって、国際競争力を高めようとしているといってよい。
スウェーデンでは人間の能力を高め、生産性を向上させることによって国際競争力を高めようとしている。
しかも、こうした人間の能力を高める教育に、政府が投資しなければならない。
ところが、らないと考えられている。
スウェーデンは日本とは比較にならないほど、輸出依存度が高い。
一九九七年の輸出依存度が、対GDP比でスウェーデンが三六・四%なのに対して、日本は一O%にすぎない。
そのためスウェーデンでは、企業の輸出国際競争力が死活問題となる。
スウェーデンはそうした競争力の武器を、人間の能力に求めたということができる。
しかも、重要なことは、人間の能力を高めるだけでなく、人間が安心して生活のできるような環境や福祉をも重視していることである。
ところが、ここで注意しておきたい点は、環境や福祉それは二重の意味においてである。
第一に、環境や福祉を重視すれば、環境や福祉という領域で技術革新が生じ、市場が開拓され、新産業が創出できるという意味においてである。
第二に、環境や福祉を重視することが、新産業へのチャレンジを可能にするという意味においてである。
それは、チャレンジをするにはチャレンジに失敗した際の安心が必要である、という意味ばかりではない。
知識集約産業では、情報や知識を発信するために、高次のアメニティが確保されることを必要とするからである。
「歴史の峠」を越えるためには、社会的セーフティ・ネットと社会的インフラストラクチュアのネットを張ることが必要だということを繰り返し指摘してきた。
これまで見てきたように、スウェーデンが教育投資、環境政策、情報インフラ整備、福祉政策に財政支出をシフトさせたということは、こうした経費で社会的セーフティ・ネットと社会的インフラストラクチュアのネットを張ったということができる。
しかし、一兎を追ったところで、何も得なかったということを、日本は嫌というほど学習したはずである。
失敗を恐れる必要はない。
しかし、同じ失敗を繰り返してはならない。
ところが、現実には同じ失敗を繰り返している。
というのも、歴史が「峠」に差し掛かっているということを自覚していないからである。
歴史は段階的に推移する。
これまでの歴史の延長線「歴史の峠」という「踊り場」にいるにもかかわらず、「踊り場」で耐える心を持ち合わせていないために、これまでと同じ方法で階段を昇ろうとする。
同じ方法で昇ることができないことを思い知らされても、道を変えようとは思わない。
過去には成功したという妄想に取りつかれているからである。
そのため古き良き時代に成功をした公共事業と減税を繰り返し、景気回復という「一兎」を追おうとする。
しかし、それは敷かれたレールの上を、ひたすら走っていればよかった時代の夢物語である。
時代は回り舞台が回転したように、状況を一変させている。
重要なことは、状況の変化に適応することである。
すでに述べたように、膨大な寄与率は人的社会的資本による、という時代に突入しているのである。
すでに、公共事業によって物的社会資本を整備しても乗数効果は低下し、虚しさばかりが残る時代に、われわれは足を踏み入れている。
人的社会的資本という社会的インフラストラクチュアこそが、経済活性化の鍵を握っている時代が始まるのである。
もちろん、こうした社会的インフラストラクチュアを整備するとともに、社会的セーフティ・ネットを、政治システムが財政を通じて張ることが、「歴史の峠」を越えるために必要となる。
もっとも、社会的セーフティ・ネットと社会的インフラストラクチュアとは、この二O世紀から二一世紀への「歴史の峠」では、融合して結びつき始めていることはすでに述べたとおりである。
ところが「歴史の峠」では、Sの指摘するように、財政が危機的状態に陥る。
というのも、「歴史の峠」では、それまでの長期的に維持されてきた社会全体のバランスが崩れてしまうからである。
Sが提唱した財政社会学を発展させていくと、社会全体の仕組みは三つの人間関係の仕組みから成り立っていると考えることができる。
日本の経常支出に占める公的資本形成の比重は、先進諸国の中でも最も大きい。
その大きさが借金の大きさに跳ね返っているということができる。
日本は「小さすぎる政府」が「大きすぎる借金」を抱えている。
しかし、それは「小さすぎる政府」が「大きすぎる公共事業」を実施しているがゆえに「大きすぎる借金」を抱えているのである。
「小きすぎる政府」の「大きすぎる借金」という特色とともに、日本の財政赤字のもう一つの特色は、地方財政の赤字が大きいということである。
つまり、「S的財政赤字」が地方財政の赤字として具現されているということである。
日本の地方財政の赤字は、先進諸国の中でも異常に大きい。
財政赤字の大きい国として名を馳せているイタリアでも、地方財政の赤字はごくわずかである。
いずれの先進諸国を見ても、地方財政の赤字が小さいのは、地方財政の「赤字」と国家財政の「赤字」とでは、その意味が大きく相違しているからである。
まず、地方政府には通貨を発行する権限がない。
中央政府の信用にアクセスでき、金融政策を財政と連動させることのできる中央政府は、国債管理が容易にできる。
しかも、中央政府はいざとなれば、通貨発行権を行使して、インフレーションによって事実上、国税を償還してしまうことさえ可能なのである。
第二に、中央政府が国境を管理する政府なのに対して、地方政府は国境を管理しないオープン・システムの政府なのである。
つまり、地方政府では、地域住民は、いつでも自由に出入りすることができる。
そのため地方債を起債して、施設を建築し、そこからの受益をふんだんに享受した上で、いざ償還する時点になれば、その地域社会から出ていってしまえば、負担を免れることができる。
つまり、地方債では地方政府がオープン・システムの政府であるために、負担を免れ、受益のみを受けることが可能となる、食い逃げ効果が働いてしまうのである。
以上のような理由から、先進諸国では地方債の起債を可能な限り抑制する。
アメリカの州にいたっては、州の憲法で地方債の発行を禁止している州も多いのである。
日本の公的資本形成が高いといっても、中央政府の資本形成が高いわけではない。
というよりも、日本の中央政府の資本形成は、先進諸国でも低い方に属している。
日本の公的資本形成が高いのは、地方政府の公的資本形成が高いからである。
もっとも、日本の地方政府の公的資本形成が高いといっても、日本の地方政府が自主的判断で公的資本形成を高めているわけではない。
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